中国の年金の仕組み

2022年05月03日

この数年、日系企業でも定年退職の社員の扱いに関して問い合わせをされることが多くなりました。

2015年の統計で、中国の平均寿命が男性73.64歳、女性79.43歳と、定年後も男性約13年、女性約30年と年金も定年後の生活を支えるものなので、どれぐらい貰えるのか、シミュレーションしてみました。


計算式)

 〇基礎年金:定年時社保基数*(1+本人平均缴费工资指数)/2*社保加入年数*1%

   本人平均缴费工资指数=当年本人社保基数/社会平均社保基数

 〇個人勘定:個人口座養老金積立額/(50歳195、55歳170、60歳139)


仮定1)男性60歳、2020年定年、上海市の平均所得が大学卒業後から定年まであった場合

  〇基礎年金=14556×(1+1.0)/2×38×1%=5531

  〇個人勘定:136646/139=983

   合計:6515元 平均寿命まで1066299元

仮定2)女性50歳、2020年定年、上海市の平均所得が大学卒業後から定年まであった場合 

  〇基礎年金=14556×(1+1.0)/2×28×1%=4076

  〇個人勘定:135016/195=692

   合計:4768元 平均寿命まで1683940元


仮定3)男性60歳、2020年定年、日本に留学、30歳から定年まで上海市の平均所得があった場合

  〇基礎年金=14556×(1+1.0)/2×30×1%=4367

  〇個人勘定:135571/139=975

   合計:5342元 平均寿命まで874424元 ※1との差額191875元

仮定4)女性50歳、2020年定年、日本に留学、30歳から定年まで上海市の平均所得があった場合

  〇基礎年金=14556×(1+1.0)/2×20×1%=2911

  〇個人勘定:135571/195=656

   合計:3567元 平均寿命まで1259866元 ※2との差額424074元


仮定5)男性60歳、2020年定年、大学卒業後から定年まで社保基数が上海市平均の60%で納付だった場合

  〇基礎年金=8734×(1+0.6)/2×38×1%=2655

  〇個人勘定:81988/139=590

   合計:3245元 平均寿命まで531132元 ※1との差額535167元


実際に年金を計算してみるとわかるのは、

①社会保険を納付していることだけでなく、法定通りの社保基数で納付されているかどうかで、大きく受給額が変わる。

②女性は50歳定年で、受給期間が長いので、受給額の影響が大きい。

③留学、海外就労の価値を、労働所得+年金受給額以上の価値にする必要がある。


日系企業でも社会保険には加入していますが、社保納付基数を下げて納付している会社もまだまだ見受けられます。目先の給与(手取給与)が労働者にとっても魅力といった事も十分に理解もできますが、社員が定年した後の生活、10年~30年に大きな影響を与える事にもなるので、社保基数の見直し、会社選びの見直しの参考にもして頂けるのではないかと思います。